AI禁止令のあと、仕事はどこへ流れたか――相談から始めるシャドーAI対策

複数の仕事の経路と人を描いた概念画(AI生成) AIと人間・人との協働

会社がAIの利用を禁じた後も、資料は期限までに仕上げなければなりません。担当者がどの手段へ移ったのか分からなければ、禁止の周知だけで実態を把握したとは言えません。シャドーAIへの対策を考える入口は、違反者の人数だけでなく、仕事の流れを追うことにもあります。

「使っていない」と「見えていない」を分ける

シャドーAIは、組織が承認・管理していないAIの業務利用を指す言葉です。AI Trust ScoreのシャドーAIに関する解説は、利用ルールと現場の仕事の間にあるずれを取り上げています。ただし、禁止すれば必ず隠れた利用が増える、どの会社でも同じ事情だ、とまでは決めつけられません。

自社で確かめたいのは、許可された方法で仕事が終わるか、困ったときに相談できるか、使ってよい情報を担当者が判断できるかです。以下では、この三点を調べる編集上の進め方を提案します。

業務の点検を考えるAI生成の概念イメージ
AI生成の概念イメージ。実在企業の事例や調査結果を示すものではありません。

違反の有無と、仕事の詰まりを別々に聞く

最初の質問を「無許可のAIを使いましたか」だけにすると、代替手段が足りない工程は見つけにくくなります。「手作業に戻して時間が増えた工程はあるか」「許可を待って納期に困ったか」「入力してよい情報をどこで確認したか」と、業務の条件も尋ねます。

回答は、利用の事実、使いたい理由、ルールへの疑問に分けます。不満があることを無許可利用の証拠にせず、相談がないことを利用がない証拠にもしません。質問する側の推測と本人の回答を混ぜないためです。

架空例:翻訳を止めた後に残った作業

海外向け資料の翻訳に個人契約のAIを使っていた、という架空の場面を考えます。利用を止めても、翻訳の仕事は残ります。承認済みのサービスがあるのに案内が届いていないのか、申請が間に合わないのか、顧客情報を除く方法が分からないのかで、次の対策は変わります。

暫定的に人が訳す、公開情報だけで試す、承認済みの環境を用意する、といった選択肢を比較します。便利さだけを理由に利用を認めることも、無料サービスという理由だけで全てを同じ危険度にすることも避け、契約・設定・入力情報を確認します。

相談窓口には、回答する側の準備も要る

窓口を設けるなら、受付先に加えて、回答する役割、判断できない場合の引継ぎ先、回答までの目安を決めます。「後で確認します」のまま止まった相談を把握することも必要です。

受付件数が増えても、問題が急増したとは限りません。窓口が知られるようになった可能性もあります。件数だけで施策を評価せず、相談内容、未回答、代替手段の提供までの状況を併記します。逆に、相談しやすくしたつもりでも回答が集まらなければ、案内や信頼関係を見直す余地があります。

相談できることと、秘密が守られること

個人アカウントの履歴や入力文面をむやみに提出させず、まず用途と情報の種類を聞きます。匿名調査でも少人数の職種や固有の案件名から本人が分かる場合があるため、閲覧範囲や集計方法を事前に説明します。匿名性を保証できない仕組みで「完全匿名」と約束しません。

一方、相談のしやすさを整えても、重大な情報の扱いを確認しなくてよいわけではありません。利用停止や調査が必要な場合の社内手順と、日常の疑問を聞く経路を明確にし、担当者がその場の裁量だけで処理しないようにします。

最初に確かめるのは、一つの困りごと

一つの部署で「安全に進める方法が分からない作業」を選び、申請から回答、代替手段の利用まで追ってみます。見つかった待ち時間や曖昧な基準を一つ直し、その後に状況を再確認します。全ての行動を見張るより前に、仕事を進める道が用意されているかを問えます。

こうした利用実態と支援環境を全社で整理する際は、AI Trust Scoreの公開情報も、自社の点検項目を考える参考になります。診断の目的は社員に点を付けることではなく、組織として改善すべき条件を見つけることに置きたいものです。

参考・編集について

AI Trust Scoreの関連ブログを参考にしています。実務解説として参照し、記事内の点検案と架空例はNewSpaceによる編集上の提案です。確認日:2026年10月19日。

NewSpace.funとAI Trust Scoreは、ともにUniqueness AIの活動に関わるメディア・サービスです。掲載者と紹介先の関係を明示しています。アイキャッチもAI生成の概念イメージです。