価値観の混乱期に生まれた芸術とAIを活用した芸術

underwater photography of turtle 芸術・文化・表現
Photo by Jeremy Bishop on Pexels.com

絵の具の跡が重なった抽象画と、AIが生成する流動的な映像。どちらにも偶然のような形を見いだすことがあります。しかし、見た目が似ていることと、同じ制作の仕組みを持つことは別です。戦後の抽象絵画とAIアートを、作者が何を選んでいるかという問いから見てみます。

アンフォルメルと抽象表現主義を、一つの様式にまとめない

ビルバオ・グッゲンハイム美術館の展覧会解説は、1945年前後以降の多様な抽象的な実践を取り上げ、欧州のアンフォルメルと米国の抽象表現主義を関連付けて説明しています。両者は接点を持ちますが、「フランスの繊細な絵」と「米国の力強い絵」という二分だけでは捉え切れません。

同館は、デ・クーニングらの身振りに関わる表現と、ロスコらの大きな色面による表現を区別しています。抽象表現主義の全作品が激しい動作で描かれるわけではありません。同じ呼び名の内側の違いを見ると、作品を時代名の実例としてだけ眺めずに済みます。

素材と制作過程へ目を向ける

MoMAの抽象表現主義の資料には、ポロック、クライン、フランケンサーラーなどの作品への入口があります。作品名、制作年、素材、画面の大きさを確かめながら見ることで、「自由な絵」という印象を、具体的な観察へ移せます。

例えば、表面の厚み、絵の具が重なる順序、余白、近くと遠くでの見え方を比べます。これらは本稿からの鑑賞の提案であり、全作品に同じ意味があるとする解説ではありません。写真で分かることと、実物の前で確かめたいことも分けられます。

AIアートでも、作品ごとの仕組みを見る

具体例として、MoMAはレフィク・アナドルの『Unsupervised — Machine Hallucinations — MoMA』(2021–2023)を所蔵し、AIを用いる生成アルゴリズム、専用のハードウェアとソフトウェアを作品の媒体として記しています。また、同館の展覧会解説は、同館の美術に関するデータや設置場所の環境情報との関わりを説明しています。

これはAIアートの一例であり、画像生成ツールを用いたすべての作品の作り方を代表するものではありません。何をデータとして使い、どう加工し、何を展示するかという人の選択も、個別の作品で確かめる必要があります。「AIなら自動ででき、人間の個性がない」という一括した説明はできません。

比較するなら、見た目の次に三つを問う

  • 何を材料にしたか:絵の具、支持体、データ、コード、機器などを、分かる範囲で確かめる。
  • 何を制御し、何を委ねたか:作者が決めた条件と、結果を見て選び直した部分を探す。
  • どの場で見るか:実物の大きさ、時間による変化、音や設置環境が体験にどう関わるかを見る。

この三つは編集上の比較の軸です。偶然性を取り入れるという接点を考えても、画家の身体の動きと計算処理を同じ仕組みとは扱いません。類似点を見つけると同時に、どの違いを残すかが比較の面白さになります。

戦後の経験と、現在の技術を短絡させない

美術館の解説が示す歴史的な背景は、作品を読む助けになります。一方、「戦争後だから全作品が同じ思想を表す」「技術の変化が必ず同じ芸術運動を生む」とまでは言えません。歴史上の説明、作者の発言、自分の感想を分けておくと、別の作品にも問いを開けます。

旧版には作家名の誤記や、書誌を照合していない参考書の一覧がありました。今回はそれらを残さず、美術館の作品・展覧会記録へ戻れる形にしました。アンフォルメルを人工知能のAIと同じ略号のように扱う表現も改めています。

出典と改訂について

初出:2023年。本文確認・改訂:2026年10月25日。AI対話の反復と未照合の固有名詞・参考文献を整理しました。作品画像の転載は追加していません。制作過程の比較は、資料と本稿の解釈を区別して記しています。