なぜなぜ分析で答えをつなげても、それだけでは原因の証明になりません。「担当者の注意不足」という説明に納得する前に、何を見てそう考えたのかを確かめたいところです。本稿では、質問の回数より、仮説と証拠の関係に目を向けます。
アイキャッチはAI生成の概念イメージです。実在の職場や調査記録ではありません。
「5回」は原因を保証する回数ではない
ASQの解説では、Five Whysは症状を掘り下げる質問手法で、必要な回数は5回未満にも、5回を超える場合にもなると説明しています。
ここからの編集上の提案は、答えの横に「根拠は何か」を書くことです。「連絡が遅れたから」と答えたら、連絡の履歴を確認します。記録がなければ、もっともらしい答えも未確認の仮説として残します。
一本の物語にしない
IHIの資料は、原因が複数あり得ること、仕組みの異なる部分を見る人は異なる回答をすることを指摘しています。受付担当と承認担当で見えている範囲が違うなら、答えが違うこと自体も調べる手がかりです。
思い込みを避ける確認点を、編集上、次の三つに整理します。
- 最初の答えだけを採用せず、別の理由も挙げる。
- 「意識が低い」で終わらせず、情報・手順・作業条件を見る。
- 一つに絞れない原因は分岐させ、関係が未確認なら断定しない。
架空例:見積返信が遅れたら
以下は考え方を示す架空の業務例で、実在企業の事例や改善実績ではありません。まず「遅い」を、合意した返信期限と実際の送信時刻の差として確かめるところから始めます。
- 受付が遅かった? 受信時刻と対応可能な時間を確認。残業記録があっても、見積作成に使える時間があったとは限りません。
- 承認待ちだった? 申請と承認の時刻を照合。申請前の待ち時間は分けて調べます。
- 必要情報が足りなかった? 依頼内容と不足情報の照会履歴を確認。照会がないことだけでは、情報が足りていたとも、担当者が怠ったとも言えません。
いずれも、記録を集める前は仮説です。説明に合う材料だけでなく、その説明では理解できない事例も探します。承認待ちと情報不足が同時に起きていた可能性も残します。

確かめられる問いを一枚残す
ASQの問題解決解説は、事実と意見の区別、現場やデータの確認、別原因の検討、対策後の結果追跡を扱っています。団体の実務解説であり、特定の職場での効果を示す実験結果ではありません。
本稿では、その考え方を次の記録カードにまとめる案を提案します。
- 観察:いつ、何が起きたか。確認した記録は何か。
- 仮説:理由として考えられること。別の説明はあるか。
- 確かめ方:どの履歴・現場・関係者を確認するか。
- 未確認:今は分からないこと。誰がいつ確認するか。
まずは通常業務への影響が小さい過去記録の照合から。顧客情報は閲覧権限と利用目的を守り、公開用の記録へ転記しません。危険を伴う業務で勝手な実験をせず、変更は担当者と安全な手順を確認します。対策を試す場合も、結果を見るまで再発防止を保証しません。
次の会議で問いを一つ足すなら、「その答えを確かめるには、何を見る必要がありますか」。原因らしい物語の完成より、未確認を減らす一歩を選んでみませんか。
出典
- ASQ:Five Whys and Five Hows(公開・更新日未確認)
- IHI:5 Whys: Finding the Root Cause(公開・更新日未確認)
- ASQ:Problem Solving(2024年11月レビュー表記)
2026-10-16に該当本文を確認。原典の図・テンプレートは転載していません。

